EXPLORATIONS ー写真とフォトリアリズムの新しいポジション

EXPLORATIONS ー写真とフォトリアリズムの新しいポジション

デジタル化された日常生活は、すでに様々な領域に広がり根を深く伸ばしている。

デジタル化のゆえに私たちの生活は近年大きく変化を遂げつつあるのは明らかである。

写真の分野でもまさに同じ現象が起きていると言える。

特にアート写真では、アナログ、あるいは新技術を使用するかどうかにかかわらず、絶

え間ない時代や文化の流れを考察するために、常に新しい表現、プレゼンテーションを

行なう必要があるのではないだろうか。

„Explorations“ と名付けられたMICHEKO GALERIEの今回の展示は、5名のアーティス

トによって開催される。日本をテーマにした作品を多く発表している2人組のユニット

のAlbarrán Cabrera、日本で活躍中の多和田有希、山田純嗣、そして現在ニューヨークで

制作活動をしている山本貴博である。

この5人のアーティストに共通しているのは、写真を基盤にした作品を制作しているこ

とだ。しかし、どのアーティストも何かしらの形で写真を扱っているとはいえ、その取

り組み方には大きな違いがあり、写真の枠組みの中で制作した作品からスーパーリアリ

ズムの絵画作品まで含まれているのは、大変興味深い。

それでは個々のアーティストに焦点を当ててみよう。

Anna Cabrera とAngel Albarrán は、共に1969年に生まれ、バルセロナに暮らす写真家

のデュオ。1996年から二人での制作活動を始め、インターナショナルに活躍している

。今回、MICHEKO GALERIEでは、小さなサイズの作品シリーズ,“The Mouth of

Krishna“, „Kairos“をインスタレーションとして見せることで、より彼らの作品の文脈が

伝わる展示になっている。“クリシュナの口”というシリーズは、友人に土を食べた、と

濡れ衣を着せられてしまった幼いクリシュナ神の逸話から発想を得たシリーズだ。 ク

リシュナ神の口を開けるように命じたヤショダは、クリシュナ神の大きく開けられた口

の中を覗き、その中に宇宙を見る。宇宙のあらゆる場所に完全なる宇宙が存在する、と

いうテーマを用いたAlbarrán Cabreraの作品は、ウィリアム ブレイクが語ったように、

一粒の砂の中に世界を、一輪の花の中に天国を、一瞬の時の中に永遠を見ているのだ

。“カイロス”のシリーズでは、“永遠の今”という抽象概念を写真で表現することを試み

ている。

2012年に制作された“The Infinite Plan”は、多和田有希の“SHELLS“ という写真を焼き切

るシリーズの作品である。“写真は私にとって死体である”と彼女はいう。一瞬の時で息

を止めてしまった写真は現実を映し出すが、それには息吹がない。そこで彼女は、写真

を引っ掻く、焼き切る、という行為を与えることによって、生命を吹き込もうと考える

。その作品は複雑なレイヤーを重ねることで色を塗り重ねた絵画のようでもあり、また

奥へ奥へと続く立体作品のようでもある。

山本貴博 は、アンティークの写真、あるいは絵葉書などをモチーフとして使い、スー

パーリアリズムの表現方法で描く。彼がテーマとしているのは、オリジナル作品とは何

を基準にして私たちはオリジナルと呼んでいるのか、オリジナルと思われているものが

実は時代の変遷のよって、あるいは人々の好みによっていつのまにか形を変えてしまっ

たにもかかわらず、相変わらずオリジナルと呼んでいる、そのおかしさを表現すること

にある。彼の作品は、写真と見紛うようなリアリズムを持って描かれているので、その

表現方法に目を奪われがちになるが、実はその作品の奥に潜んでいるテーマこそが大変

面白い。現代社会のひずみや矛盾、あるいは日常生活の些細な出来事の中に本物とは、

真実とは何かが問われている。

山田純嗣の“絵画を超えて”のシリーズは写真と絵画のコンビネーションだ。まゆ、複雑

きわまる山田の作品過程を追ってみたい。彼は世界的にすでに有名になっている作品を

モチーフとする。例えば、モネの睡蓮のシリーズだ。睡蓮のモチーフを彼は石膏で形作

ることから始める。それを写真に撮り、原寸大の大きさにプリントする。さらに銅版画

を用いて細部を描いていく。写真の上にプリントをした銅版画の上にパールの色を手書

きで描くことで完成となる。この複雑な行程が彼のやりたいことを明確にしてくれる。

写真とは字で書いたごとく、現実を映し出すことである。カメラはそこにあるものを隠

すことなく表す。絵を描く場合、そこにあるものをあるがままに描いたにせよ、そこに

は作者のフィルターがかかる。また時には作者の意図によって、そこにあるにもかかわ

らず、描かれない場合、何もないにもかかわらず何かしら描かれている場合もある。山

田の作品は写真と絵画の中間を目指す。彼の作品を見るとすぐさま、モネの睡蓮を代表

とするように、その有名な作品を思い浮かべる。しかし、近づいて作品を見ると、そこ

に実際の睡蓮の作品にはない山田のドローイングの線を見る。さらに光線の変化でその

作品は色や表情を大きく変える。現実と幻想の狭間を自由に飛び回る作品と言えるので

はないだろうか。

„Explorations“の展示は、日本の現代アート作家、および日本の文化や思考を作品に中

に取り入れているアーティストの饗宴である。写真という一つの表現方法を元にそれぞ

れの作家がそれぞれの文脈でそれぞれのテクニックを駆使して作品を作り上げる。彼ら

は展示を見る私たちに、最新のアートの動向や洞察力、テクニックを見せてくれる。

彼らの表現を見ることで、現代アートには無限の可能性があることを私たちに教えてく

れる。

展示期間:2017年1月14日(土)から2月25日(土)

オープニング:2017年1月13日(金)、18時30分から21時まで。数名のアーティストが在廊予定です。
アーティストトーク:2017年1月14日(土)、15時より。2人組のアーティスト、Albarrán Cabrera による作品解説。アーティストトーク参加ご希望の方は、以下に1月12日までにお問い合わせください。contact@micheko.com、または +49 89 3816 9388.

2018-02-28T00:51:20+00:00